ポストプロダクション - タッチアップ -(YKK編)

ポストプロダクション - タッチアップ -(YKK編)

2022-04-04

ポストプロダクション=タッチアップ

今回はポストプロダクション(以下、筆者はタッチアップと言います)
についてお話していこうかと思います。
ポストプロダクションは簡単に言うと”最後の仕上げ”の意味です。
筆者的には言葉の意味はあまり重要ではなく、
やはりどのようにタッチアップをしてくかが重要になってくると思います。
いざ、自分の思った通りのレンダリングができたとして、
その画像をどのように修正/変更を加えて
建築CGパースを良く見せていくのか。。。
実際に筆者が行っている技術とセンスを交えてお話していきます。

今回は、筆者が作ったYKKの岡山支店のCGを参考にします。

レンダリング画像とタッチアップ画像を比較

レンダリング画像をどのようにすれば建築CGパースが良くなるのか、
実際に例を見ていきます。
以前に筆者が作ったYKK岡山支店のCGパースです。
まずは、元画像(レンダリング画像)とタッチアップ後の画像を比較します。図-1

図-1(左:レンダリング画像、右:タッチアップ後画像)

図-1では全く印象が異なるのは当然ですが、
基本的には自分の想像に違いCGに近づいた感じはあります。
これでも100%いいとは自分の中では思っていませんが、
少し見切りを付けて自分の作品は公開しています。
筆者がどのようなことに気を付けてタッチアップをしたかを解説していきます。
ただ、タッチアップに”正解”はないので、
自分が思うCG通りになれば”正しい”と思います。

カメラアングルについて

今回のカメラ設定は、筆者的には少しチャレンジしたアングルになります。
本来は、建物の正面で捉えて、シンメトリーな建築CGにするのが一般的ではありますが、
今回は建物の外部サインが見えるアングルで撮ろうと思いました。
そうすることで、あえてシンメトリーを外して、外した部分に”印象的な何か”
もってこれないかと考えたからです。
そのサインを入れるアングルを撮るために上部のスペースが空いたので、
そこに月明りを入れてインパクトのあるCGに仕上げています。(図-2)

図-2

色について

図-1を見てもらったらわかるかと思いますが、
レンダリング画像は深い青みを帯びたCGになっていて、
タッチアップ後のCGは黒を基調にしたCGになっています。
YKK岡山支店のCGのコンセプトは赤・青・黄色の原色を使用しています。
そこで、その原色を活かすために、CG全体の色を白黒を使用して、
アクセントカラーで原色を使用することによって
インパクトのあるCGに仕上げました。

今回は一例ではありますが、建物ごとに
そういった建築物の特徴を捉えて、それを活かした
建築CGパース作りをすることが大切です。

光について

光については、いろいろを考慮しました。
光は3つにフォーカスを当てました。
”月””車””内部照明”です。
今回はこれらの3つを意識することによって、
インパクトのあるCGになったと思います。
月明りはインパクトを加えるために、
車の照明は強すぎずに、ヘッドライトの部分のみを強くして、
道路やガードレールの反射を少し加えることによって、
リアルなCGになるように心がけました。
そして、最も重要な内部照明は、
内部の原色を活かした照明にしました。
外部と内部の明度差をつけることで、
メリハリのあるCGになります。(図-3)

図-3

背景について

背景と建物の関係性は非常に重要です。
今回は実はあまり良くない例になります。
理由は、建物の外周と背景の色が近いので、
輪郭があまりはっきりでていないので、
実は好ましくないCGです。
ただし、ガラスが建物の輪郭にあるので、
そこで明度差がついているので、まだ許容範囲内です。(図-4)

図-4

本来は、建物の輪郭と空の明度や色相を変更して
輪郭がはっきりするようにします。
建物の輪郭と空が近い色相や明度だった場合は、
建物があまりはっきりしないCGになってしまいます。

たまに使えるTips

全部のCGに使えるわけではありませんが(むしろほとんど使えない)
こういったレトロやシックなCGを作る際には、
全体的に少しノイズを加えることで、印象がガラっと変わります。
まずは、図-5で画像を比較してみます。
左がタッチアップ後の画像で、右がタッチアップ後に全体にノイズをかけた画像です。(図-5)
(違いが分かりにくいので、拡大してみてください。)

図-5(左:タッチアップ後、右:タッチアップ後にさらにノイズを加えた画像)

こうすることによって、少しリアル感が出ます。
ノイズが全くないと、The CG感がぬぐえませんが、
ノイズを加えることで、レトロやシックな感じをより強調し、
印象をガラっと変えることができます。
この手法が良いか悪いかは筆者としては言えませんが、
少し今までの感じから変えたい場合は、
こういう手法をとってもいいのではないかと思います。

まとめ

今回は、筆者がタッチアップをする際にどのようなことに気を付けているかを紹介しました。
次回のポストプロダクションでは、”手順”について紹介します。
タッチアップにも手順があって、それをしないと全体的にアンバランスなCGになってしまいます。
建築CGパースでは、”余白”が大事です。
建築だけ見せても良いCGにはなりません。
余白をうまく活用して、CG全体のバランスを作ることが大切です。
今回は、その一歩にすぎませんが、
そういった技術をこれから作る建築CGパースでは表現していってほしいです。