割り付けについて
今回は目地割り/割り付けについて、お話ししていきます。
建築CGパースよりかは、建築の知識よりですが、
建築CGパースを作るうえでは知っておいてほしい知識です。
普通の建築CGパース屋さんでも、”割り付け”についてはできていない人が多いほうに思います。
”目地割り”と聞くと、すごく簡単に思うかもしれませんが、
とてつもなく奥が深いものです。
この目地割りで、昔はよく筆者のボスに怒られたものです。
某建築家の元で働いている私が良くボスから言われていたことが2点です。
①目地は通す
②眉間割りにしない
この二つです。
これは、筆者の中(事務所の中?)では絶対的なルールです。
これは全員が持つべくして持っている常識として常に建築の話をします。
もし、この二つができていない新入所員などがいた場合には、、、、、、、
目地割りは、それくら常識で、最も重要で根本的なものだと思います。
この二つをベースにお話ししていきます。
目地は”通す”もの
昔、筆者のボスから「目地は通せ!!」と激怒されました。
原因は、目地が開口部の部分で途切れていたり、
ある理由によって、目地の高さが違っていたりしていたからです。
今考えればあり得ない話ですが、当時はなぜそこまで怒るのか理解できませんでした。
建築では頻繁とはまではいきませんが、目地が通っていない建築を見かけます。
それが建築としてダメではありませんが、デザインとしてはダメです。
それは目地の位置も”割り付け”の一つだからです。
目地の位置もしっかりと考慮して、デザインの構図が壊れないようにするのが
建築家の役目なのです。
眉間割りとは
眉間割りとは、眉と眉の間・・・つまり中心から割り付けていくことです。
(眉間割りは割り付けの概念であって、目地割りに限ったことではありません。)
昔、まだ筆者が事務所に入りたてで、眉間割りになったデザイン提案をボスにしたときは
こっぴどく怒られました。
そこで眉間割りはしないと認識しました。
実は、眉間割りをしない理由は直接ボスに聞いたことはないのですが、
寺社仏閣では、鳥居をくぐる時は中心を歩かないと思います。
神様が通る道なので、そこは通らないとされています。
割り付けも同じ考えを考慮しているのかもしれません。
また、中心から柱の割り付け等を行っていくと、
中心に柱がきてしまいます。寺社仏閣以外に海外の建築様式等でもそうですが、
中心は必ず入り口です。
有名なパルテノン神殿も中心に柱はありません。
なので、中心から割り付けを行う眉間割りは、意匠的にはNGとされています。
(場合にもよります)
眉間割り事件以降、筆者が作るCGの目地割りも、絶対に眉間割りにはならなくなりました。
ずっとそうしてきたので、目地割りや眉間割りについては言われることはなくなり、
それが常識となっていきました。
(もちろん、材料の規格のことも鑑みて、”目地割り”は眉間割りになることもあります)
シンメトリー建築
名探偵コナンの映画で「時計仕掛けの摩天楼」という映画があります。
これは、建築家の森谷帝二がシンメトリーではない建物が美しくないので、
自分が作った建築の中でシンメトリーではないものを壊すという狂気にでるのですが、
筆者としてはその気持ちは理解できます。
建築家のシンメトリーは絶対に崩れてはいけません。
建物を壊すまではいきませんが、
建築家としてシンメトリー建築を作るのであれば、
絶対的にシンメトリーでならなくてはならないと思います。
もし、筆者がボスにシンメトリーでない建物のデザイン提案をしたときには
問答無用でクビになるかもしれません(笑
それくらい、シンメトリーをデザインすることは重要なのです。
目地割り
例えば、タイルの割り付けは、CG上では、単純にマッピングで済む話ですが、
建築を作るうえではとても真剣に考えなければなりません。
むしろ、設計者がタイル割りを考慮したデザインをしているときは、
CGパースを作るうえでも、その設計者のデザインをくみ取らなければなりません。
筆者が良く行うことは、床のタイル割りに合わせて壁の位置を決めたり、
それを元にガラス手すりの目地の位置を決めたり、
照明の位置を決めたり、開口部の位置を決めたり、
目地割りを行ってから、それぞれの建築の要素の位置を考えます。
建築の意匠を学んでいる方なら、かなり常識の知識かもしれませんが、
建築CGパース屋さんは全員が建築を学んでいないので、
パースが設計者側が意図していない目地割りになっていることがよくあります。
筆者自身も、設計者なので、自分で図面を書いて、後輩にCGを任せるときがあるのですが、
筆者自身は目地割を考慮して600角のグリッドにすべて納まるように設計しているのですが、
後輩がいざCGに起こしてみると、目地割りが綺麗にできていないことが良くあります。
CGパース屋さんは、設計者の意図をできる限り汲み取ることが大事だと思います。
目地割りなんて、あまりCGでは関係ないと思う方もいるかもしれませんが、
それ一つで気づかない美しさを表現することができます。
目地割りが綺麗にできているCGとできていないCGでは、
無意識の美しさに違いが出てきます。
それを、建築CGパースを作る人にも知っておいてほしいです。
テスト用ですが、目地割ができているCGとできていないCGを載せておきます。(図-1)
図-1を見ると、やはりセンターにサッシがあるのがすごく気になりますね。
ガラス奥の景色がシンメトリーの庭園だとしたら、
やはり中心にサッシが来てしまうことが好ましくないでしょう。
そして、サッシと天井の目地が合っていないのも気になります。
そういった意味で、図-1の右のような、
目地割りを考慮するべきでしょう。
ちなみに、綺麗に割り付けするために、
図-1の右はわざわざ柱の間隔を調整しています。
割り付けに合わせて柱を調整するのもデザインのひとつです。
建築CGパースを作るときは、設計者はここまで計画しているかもしれないので、
しっかりと目地割りの知識はいれておきましょう。
また、目地割りまで考慮されていなくても、
綺麗な割り付けが可能であれば、割り付けるように心がけましょう。
コンクリート打ち放しと木造の割り付け
これは筆者がまだ若かったころの体験談になりますが、
割り付けで一番失敗してしまった例を紹介します。
コンクリートの打ち放しのパネルは基本的に900X1800(ミリ)の大きさで決まっています。
一方木造は910のモジュールで柱割りを行うのが一般的です。
しかし、木造の場合はモジュールは一般的であって、数値はいくらでも変更可能です。
もう筆者の言いたいことが分かった方もいるかもしれませんが、
コンクリートが900mmのピッチに対して、木造の柱割りが910mmだと、
割り付けが10mmづつずれていきます。
これは非常にまずいです。
実際は1階がRC造の打ち放しの仕上げで、2階が木造の仕上げでした。
設計の段階でこのようなミスになってしまっては、施工の段階でどうやっても
割り付けを綺麗に行うことができません。
なので、設計段階でこのようなミスがないように気を付けなければなりません。
できれば、CGの段階で目地割りの検討も行い、綺麗に割り付けが行えているかを
見極める必要があります。
良く言ういい建築の目地割りを確認する場所
これは、大学の先生がおっしゃっていたことですが、
建築がいいかどうかの判断は目地割り(割り付け)で決まってきます。
(個人住宅を除く)
その中でも”トイレ”を見れば、一目瞭然なのだそうです。
設計者がトイレのタイルの目地割りをしているかしていないかで、
その建築に対する思いが伝わるそうです。
トイレだから目地割りを適当にしていいわけではなく、
トイレすらも美しさを求めて綺麗に割り付けを行えているかどうかが
いい建築かそうでないかを判断する一つの基準になります。
もし機会があれば、みなさんも一度トイレの目地割りを気にしてみてみてください。
いい建築は、トイレの目地割もしっかりしているはずです。
そして、それを意識できたなら、建築CGパースを作るうえでも
そういった目地割りを意識したパースを作ってみてください。
少しだけCGパースの見栄えがよくなりますが、
その”少し”がとても重要です。
まとめ
今回は、割り付けと目地割りについてお話しました。
ほぼ文章のみの記事ですが、
筆者としては非常に重要なことをお伝えしているつもりです。
あなたのCGパースはしっかり目地割りや割り付けを考慮した
CGパースになっていますか?
設計者やクライアントに言われなくても、
CGパース屋さんはそれを汲み取って
CGパースを作っていかなくてはならないと筆者は思っています。
この記事を読んで、それを少しでも理解していただけると
筆者としては非常にうれしいです。